僕は感動した。そして知った、その眼差しの意味と、コーヒーへの愛情を。

いつものように、焙煎歴50年の山本清人さんに
エベレストコーヒー豆を焼いてもらった。

焼き窯を開けると、猛烈な水蒸気と共に
飛び出してくるコーヒー豆は、

焼く前の薄く緑がかった色から
まさにコーヒー色に綺麗に焼きあがっている。


と、その時、山本さんが言った。

「今、生豆(なままめ)が、1つ入った。」

僕には見えなかったし、
まったく気がつかなかった。

窯の上部に生豆を入れるところがあって、

エベレストコーヒーの焙煎をお任せしている熟練焙煎士山本さん

普段はそんなことはありえないんだけど、
何かの拍子に一粒が転げ落ちたようだ。

「探しといて」と言って山本さんがお店に戻った後、
ぼくはステンレスのボウルで、すくって探してみたが、

コーヒー豆を冷ますために回ってる中で、
色が違うとはいっても、何千、何万?の中から
一粒の豆を探すのは大変だ。

「見つかったか?」

と聞かれたが、探しきれてないのがわかると、
山本さんは今度は自らボウルですくい、
ザルにあけて探しだした。

(え、ほんとに一粒探すの?)

その時、僕は理由を考えた。

「やはり生豆が一つでもあると、
お客さまが豆をコーヒーミルで挽いた時に
刃を傷める可能性があるかもですよね。」

と、独り言のように呟くと、

山本さんが答えた一言に、僕は感動した。

「違うよ。

生豆が入ったら、

コーヒー、美味しくないだろ。」





一粒ですよ。

この何千何万粒の中の。

それを当たり前のように答えた後、

黙々と作業を続け、
ついに一粒の生豆を見つけると、

黙って僕に手渡した。

おそらく、おそらくだけど、
この中に、焼けていない豆が一粒入っていても、
味の変化に気づく人は、たぶんいないと思う。

僕自身、きっとわからない。

 

でも、山本さんからすると、
焼けてない一粒が入ったのを見て、
それを取り除かないことは、
プロとして許せないんだろう。

お客様の美味しさのために妥協はしない。

誰にもわからないところにもこだわる、
職人とはそういうものなのかもしれない。

山本さんがいつも焙煎している時、
いつも同じポーズで、
いつも同じタイミングだ。

エベレストコーヒーの焙煎をお任せしている熟練焙煎士山本さん

3年前に撮った写真と区別がつかない
と揶揄(やゆ)したこともあったが、
それには大きな意味があった。

真剣な眼差しでコーヒーを見つめているのは
こうした不測の出来事にも気を抜かないためだったのか。。

いつだったか、営業で自家焙煎のショップに行った時、
その店のオーナーと話してたら、お姉さんが割って入って来て、
「社長、豆焼けました」と言ったら、
その社長が「じゃ出しといて」とその子に指示した。

その時は何気なく聞いてたけど、
山本さんならあり得ない言葉だ。

彼なら絶対にその場を離れない。人に任せない。

そして見つめるのだ。

今回も、山本清人さんの手で、
素晴らしくエベレストコーヒーが焼きあがった。

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